ライタァジェノサイド/月夜乃海花
 
を持った影はぐにゃりと小説家に近づく。万年筆は緩やかにカーブを描いて小説家を刺した。108回。彼が小説に出した登場人物の人数を。彼の目や手は黒く滲んでいった。

「ああ、それで良い。僕も所詮は書面の上の神だ。やっと楽になれる。創られた神は案外辛いものだ。次は君の番。だろう?」

そして、この小説家もまた生み出されて殺された人物となった。

もう万年筆は動かない。









なんて。そんな筈は無く。
万年筆は待っている。
誰かが持つのを。そして、繰り返す。
一種の箱庭の御伽噺。
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