14/末下りょう
 
(この家はとても寒いね
大きな口を開けて
ぼくたちを飲み込んだこの家はとても

あの子は帰ってきてからずっと泣きっぱなしだけど
きみが忙しいってのもわかってる
指をせわしなく動かしては眼をキョロキョロさせてるから

ぼくの電話にはいつも返事はくれなかったけど
ほんとうは少し傷ついてたんだ
すっかりほっとかれることにまだうまく馴れてなかったから

この家はとても寒いよ
毒を飲むようにガラスを食べるみたいにさ

ぼくはもうなにも食べることができなくなって
眠ることも夢見ることもなくなったよ
光がすごくいやになってしまって
いまは海がとても怖いんだ

毒を飲むよう
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