スーヴェニア 2021/10/26/星染
 
2021/10/26


翻訳できない午後の足音を
窓からの昏い星の光を
勝手に手に取らせて
勝手に息をさせて
もらっていただけ
あなたからただ
それが酸素でなくてもよかった
息をするってそういうことじゃないから

醒め際に口角を上げたあなたの
唇が震えていたのを思い出した
それも夢想でかまわないとわかってるよ
(そこにいなかったけど
名前を書いた きれいな名前だと思った)

薄い後光の正体を識っている あれは黒猫の瞳のなかの静謐、あるいは夏の翅 だった
哲学のないただ生き繋ぐための音楽は透明できれいだった
けれど それでも
静かにかかっている額縁の端に
嘘みたいな顔でついた醜い罅を
指でなぞる
大きな夢だった

もうすぐ冬になるよ
オリオンの右肩でまだ生きている
光のこと
ねえ 何も言わないでまだ
あなたは黙ったままで 多弁な私の詩のことを
思い出せない夢にしていて
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