私は猟人だった/山人
 
。かくれる穴に入るときに、独特の足跡を残す。ふいにウサギは立ち止まり、回れ右をして後ろに戻る。そこから大きくジャンプし、木の袂の穴に入り込む。この足跡が最初まったくわからず苦労した。しかし、一人歩きをしているとじっくり習性を確認しながら猟ができ、覚えることができた。ただ、足跡は夜、多少の雪が降っている条件が望ましく、雪が全く降らない場合は足跡がごちゃごちゃになり、難易度が増した。
 猟は好きだったが、射撃場に通う金もなく、貧乏猟師だったから、なかなかレベルは上がらなかった。即実猟でしか練習できない境遇にあり、富裕人でなければ難しい趣味であると感じた。今はもう撃つことはできないが、散弾銃ベレッタの重みと、発砲の瞬間は克明にイメージできる。鼻の奥に銃口の香りが染みついている。
 昨日の夜、無人駅からの帰るとき、ライトを点けたらウサギが一瞬こちらを見て静止した。純白で美しいウサギだった。クラクションを鳴らすと欽ちゃん走りのようなけったいな慌てようで、闇に消えていった。

 

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