ネフスキー通りで/Giovanni
 
人の人の波が群れが
皆ぞれぞれの方角を向き
時々それが出逢い擦れ合い
火花を目映く飛ばしても
漁火の夢のようにすぐ消えてしまう

僕は一人だ
この人群れの中にいて
砂漠の深淵のような
うつろな内奥をもつ鈍器を
目だけはっきり見開いて
言葉もせずに抱えている

だからこそ僕は一人だ
一人であるために一人でいる
望まないために望まないでいる
止まらないために止まらないでいる
笑わないために笑わないでいる
アルカイックスマイルも
ジャパニーズスマイルも皆捨て去って

今僕はアニチコフ橋の
上に立ち
荒馬を押さえる男の像を眺めている
午後8時 空はどこまでも
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