詩の日めくり 二〇一八年十三月一日─三十一日/田中宏輔
 
鼻孔。
近所尾行。
ひとが歩いていると
そのあとを、近所がぞろぞろとついてくるのね。
近所尾行。
ありえる、笑。


二〇一八年十三月九日 「自由金魚」


世界最強の顕微鏡が発明されて
金属結晶格子の合間を自由に動く電子の姿が公開された。
これまで、自由電子と思われていたものが
じつは金魚だったのである。
自由金魚は、金魚鉢たる金属結晶格子の合間を通り抜け
いわば、金属全体を金魚鉢とみなして
まるで金魚すくいの網を逃れるようにして
ひょいひょいと泳いでいたのである。
電子密度は、これからは金魚密度と呼ばれることにもなり
物理化学
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