通訳士のキムさんのこと/板谷みきょう
なったのは
食堂で一緒になる通訳者の
朝鮮人だった
彼は日本語を流暢に話し
かの大戦で樺太に徴用され
終戦後も帰還しなかった
と話してくれた
こうでもしないと
生きて行けないね
通訳で北海道の地を踏んだが
これが終わればロシアに帰ると
話していた
食事の時にしか
会う事が無かったが
ボクは
日本人として
とても恥ずかしく
彼に対して
申し訳ない気持ちで
一杯になった
複雑な事情が
絡まり有ってるから
イタヤさんが
責任を感じることないね
三か月ほど病院の敷地内を
歩いている姿を見ていた
そして音沙汰もなく
消えていった
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