喫水線/茶殻
 
全てを覆い尽くすほどの光がさすとき
私の影は私自身にほかならない
落書きの女は次々に書き足されてなお
靴がなかった

迷子の光が
真夜中に閉じ込められたとき、
公園の街灯がそれをほお張ったとき、
その光の腹を開くのは羽化したばかりの蝶

海の向こうの街角を撮る
蜃気楼にそびえる十字架や
信号機の汗の粒までも懐かしむ
ジプシーの血を物語に垂らして異郷に虹を架ける

浮上する光
戦争と幻想が交差する
ストップモーションから現れる獣の目の少年
背景を徐々に失い彼は鋭敏な自我を晒す

こぶしをはみ出すほどの鉄鉱石を握りしめて
木の扉を何べんも叩いた
聾者の隣人さ
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