ひとつしか照らさない灯りを手に持って/ホロウ・シカエルボク
に照らすことはない
だって、ごらんよ
そんなものを誇りにしている彼らの顔ときたら
LEDの病的な明るさの下で
まるで盲目的にしか生きていないじゃない
ひとつしか照らさない灯りを手に持って
人通りの途絶えた通りを歩いている
どうしてそこは誰も歩かなくなってしまったのか
それは
人生を楽しいと錯覚させてくれるものが
みんなシャッターを下ろしてしまったから
ひとつしかない灯りは
錯覚を必要としない
楽しいふりをするためにアルコールに協力を要請したり
ネットで自分のハッタリの為に他人をダシにする、なんて
卑しい真似をする必要もない
ひとつしかない灯りがその光で照らすものは
必ず自分の歩いていく先のはずだ
方法は、手段は、きっとごまんとある
だけど選べるのは必ずひとつだけだ
気負う必要はないけど
あまり悠長にも構えちゃ居られないぜ
だって、人間は
幸か不幸か必ず有限なんだからさ
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