王子と人魚の話/板谷みきょう
 
復を願った

三日目に
「バカヤロー!」と叫び
王子の意識は戻ったというが
王子は
体中のリンパ節は潰瘍を作り
臀部には褥瘡も作られていた

王子のベッドは三階の6人部屋に
一人だったので
飛び降り自殺を懸念し一か月の間
従者が付き添いをしていた

しかし王子は立ち上がる気力も無く
食事の時に半座となっても
激しい眩暈が襲い
歩行もままならなかったのだ
ある程度の治療期間の後
王子は王様に連れられ
占い婆の許を訪ね
生き想いを断ち切る祈祷を受けた

それから暫くして
王子には新しい姫君が与えられ
二人の子供を授かったのだ

人魚とはそれから一度も
会ってはいない

人魚との再会の機会は
それから数年後のことである
その話は
いずれまた改めてすることにしよう

さぁ、今日の夜伽は
ここまでにしておこう
2021年の終わりに向けて
来年こそは
幸いなことの起こることを願って
眠りに就こうじゃないか
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