王子と人魚の話/板谷みきょう
 
婚姻関係を結んでから
生殖行動をするものだと
固く信じていた王子が
足萎えの人魚と恋に落ちた

王子はすぐさま王妃に
美しい歌声を持つ人魚を
紹介したが
王妃はその姿を見て

あれでどうやって
台所に立つと云うんだい

お前を片輪者と一緒に
させる為に育ててきたんじゃ
無いんだ

王妃は人魚の前で
平然と
そう言い放った

それから人魚は
王子の前から姿を消した

そして数か月後には
王子は服毒自殺を図った

王様は
占い婆の許を訪ね
八百万の神に王子の命を
救うように祈り
現れた竜神の指示に従い
影膳を用意しては
川に流して回復を
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