オスファハンの独語(二)/朧月夜
エインスベルがわたしの元に入門したいと言ってきた時、
わたしはその理由に驚いた。
いわく、彼女は姉と母の仇を討ちたいと言うのだ。
そのような理由で駆使する魔法などない、わたしは言ってやりたかった。
エインスベルの本名はエインスベル・アリア・ガルデという。
そんな本名すら、当時のわたしは知らなかった。
彼女は自らをアルスレイン・ユークレイナと名乗っていたから。
そんなわたしを若いとも、馬鹿だとも罵ってもらって良いだろう。
しかし、わたしは彼女の未来に幸福な肖像を見出すことが出来なかった。
エインスベルの未来は暗いものとなろうと、
当時のわたしも分かっていたはずなのだ。
分かっていたはずなのだが、わたしはエインスベルをわたしの弟子とした。
今では不詳の弟子だ、と心の底から言える。わたしは、
エインスベルを良き方向に導いたのか、悪しき方向に導いたのかと、迷うのだ。
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