雪と夜行バス/ひだかたけし
横殴りの雪吹き付ける
一本の街灯を見ていた
停止した夜行バスのなかから
家族は温めあい笑いあい
まだ共にいた
いつか別れの日がやって来て
きれいさっぱり孤独になる
その思いは哀しく確信に変わりながら
膝の上で眠る愛娘を慈しみ
夜行バスのなかから
横殴りの雪吹き付ける
真っ白に渦巻く一本の街灯を見ていた
*
別れは数年後にやって来た
住家は取り壊され
辺り一面の雪野原が残った
*
〈雪〉はわたしを冷たく透過し
存在の孤独へと赴かせる
予感として、確信として、現実として
それは連帯の最中だろうとなかろうと
存在の根っこを露わにする
たとえそれが愛の、光の海に繋がっていようとも
やっぱり人が最初に(最後に)居るのは
こののっそり荒涼とした場所なのだ
私たち一人一人、それぞれがそれぞれの荒野を抱えて
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