詩の日めくり 二〇一八年十二月一日─三十一日/田中宏輔
 

いや、むしろ、わたしの喜びと悲しみが、彼として存在しているのだ。
しかし、だれが、わたしの自我などに云々するだろうか。
他人の自我などに。
ましてや、本人にさえ、あるのかどうかも、わからないものなどに。
あらゆる瞬間が永遠になろうとしている。
ある一つの夜が、わたしのすべての夜になろうとしている。
その夜の出来事を、わたしの自我の根が、たっぷり吸い込んでいたのだ。
わたしの自我自体が、その夜の出来事そのものになるほどに。
言葉ではないのだ。
言葉じゃないやろ。
好きやったら、抱けや。
その通り。
言葉ではなかったのだ。
ぼくは、何もせず

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