雪原を駆ける海馬/ただのみきや
ら拭えない
宝石商の女の黒い刃物のようなポージング
わたしに一つの夜の捻じれを縫い付けて
フルートみたいな針が咬んだ
おまえは激しく鳴らされる鐘
音の中で音を喪失するように
ひとつの体温の空白を抱いている
おまえは水底の石
太陽の化石を秘めたまま黙し
辺りを揺らさないようにそして
微かな揺らぎすら見逃さないように
雪をまとった大地その肢体の眩さに蒼い陰が憩う
針葉樹をくぐるヒヨドリの声が冷気を裂いた
ああ忘却の白い海 構築と瓦解の混沌から
ウェヌスのような記号の肢体を引き出し得るか
まだらな眼差しの果て――茫漠
《2021年12月26日》
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