気象予報士の午後/牧村 空太
朝から降り始めた雨は
午後になっても
「しとしと」
と
腕に絡みつくように降りつづけている
こういう降り方をする雨は
すぐに止んだためしがない
経験豊富な予報士も
「こればっかりは
どうしようもないのよ」
と
頭を抱える
ましてや経験の浅い私に
雨のあがる兆しなどつかめるはずもなく
永遠に続く雨にゾッとしながら
早く疲れて止むことを
願いはじめている
何が悪かったのか
地球を温暖化させたことか
暗いニュースの絶えないことか
「仕事、仕事」
と
何でも仕事を言い訳にする
私の言動か
もう
何がキッカケだったのか
されさえも風化してしまうくらい
長い時間がたったような錯覚におちいり
氾濫した雨水が
腰の高さまで溜まった部屋の中で
腕に絡みついた雨雲に
ぽんぽんと触れながら
A型の私は
声無き言葉を発することしか
出来ないのだ
相変わらず
「しとしと」
と
降り続けている雨を見つめながら
「無力だ」
と
口のなかでつぶやいた
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