それきり/あらい
いにしえにしみついたぬくもりは、
邂逅のうちで最も深い思慕で満たす
セピア色の余韻。新月を零として数える濤声
見え透いた脅し水が染み込むように 立ち騒いだ楽音
夕餉の鐘。寸足らずのかいまきをひとえにする夢遊病者
終わったあとで使った分を補う。海岸では無意味な墓守がいる
拾われた亡き人は、墜死した熱情を散花した
汚れなき雷鳴は空を滑るように、空想を呼び込む
枝分かれた双児は切符を手に口づけを交わし包容し
垢抜けた階段を共に登る
無いことを仮にあるように、削って減らす世界樹のことわり
乳飲み子は、か弱く、それでいてこの手を離そうとはしない
磯辺と下るなにかの
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