結実戒律/あらい
 
あの華や。と指を往く仕種が
ずっとずぅっと。緒を弾いて
十六夜の鉢 と言うのよ
小さくてつまめない程の 硝子の欠片
ありもしないものを抱き抱え
貴方と呼んで
今から明日に迎える
毒があるの、だから駄目なのよ
造花の胡蝶蘭を讃える泡沫に
いくつ呑まれたのだろう
母は、刺さった刃をすぅと引き抜いて
あとには決まって砂糖菓子の芳ばしさ
口に含んだのは きっとわたしのこと
透過する青嵐は口を雪ぐように
言い淀んだ畝に併せた?は
多分誰かの礎を築きます
濁った白湯に浮かぶパラフィン紙に
累と消え失せて
頼りない格子の影に挟まれた恋文は色褪せ
掠れた声でうたう小鳥たちは寄り添い
厳冬を越す。どこからか
滴る様な魂動が反響する
啄まれた赤い実が 誰かの心臓だったから
今 わたしはわたしを殺し 若木に触れ
飾られる 蕾になる
風がどぅどぅと邪魔をするので
月は決して泪を見せませんでした
ただ大海原はそれを黙って満ち引いて行く
ほら、姿も形も闇に紛れてしまい 
とうさまとの距離は図れなくなる
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