希望だったけれど叶わなくてもよかった/ホロウ・シカエルボク
 
てドアベルを押した、面倒臭そうにドアを開けた爺は俺の顔を見て目を丸くした、俺は爺を家に押し込むように玄関へと侵入し、ドアを閉めた、「ポチを殺したの、お前だろ」あの犬の名がポチかどうかなんて俺は知らなかった、けれどそれは爺も一緒だった、爺はさっきよりもひどく蒼褪め、それから玄関に置いてある靴箱に一瞬目をやった、俺はそれを開けた、血の付いたバールが隅に立てかけてあった、俺はそれを手に取った、爺はワナワナと震えていた、さあ、どうしようかな、と俺はわざと低い声で言った、爺は腰を抜かし小便を漏らした、俺が武器を振り上げると縮こまって痙攣し、それから動かなくなった、そして脱糞した、死んだのか、気絶か…確かめてみる気もなかった、俺はバールを爺のそばに置き、電話機のそばのメモとペンを拝借して「犬殺し」と書き、それを爺の身体の上に置いた、そしてその家を後にした、十分足らずの出来事だったのに、身体中にニコチンのにおいがこびりついた気がした、それでとりあえず次にすることだけは決まった、家に帰って、存分にシャワーを浴びることだった。


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