エインスベルの出自/朧月夜
 
かの名高きカーガリンデの魔女、エインスベルよ。
その出自は謎に包まれている。
彼女を養い、育てたのは高名な魔導士、オスファハンである。
オスファハンはエインスベルの育ての親にして、最高の師匠だった。

エインスベルを嫌う者のなかには、彼女は海の泥から生まれた、
と言う者もある。彼女がこの街に厄災を招いている、という恐れからであろう。
また、彼女を崇拝する者の中には、彼女が大商人や、
貴族の娘だったと考えている者もいる。

しかし、文献が整っている今では、そのどれもが正しくないと分かっている。
エインスベルはファシの街で売られていた、奴隷の少女だった。
オスファハンは彼女の魔力の高さに魅入られ、彼女を引き取ったのだ。

エインスベルとオスファハンとは、実の親子のように育った。
彼女をアイソニアの騎士に引き合わせたのもまた、オスファハンである。
オスファハンは信じていた、彼女がいつか彼をも超える魔導士になると。
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