side order──田中修子へ捧ぐ/中田満帆
 

 たとえばあのひとが、
 過去になく、
 いままさに
 生まれるなら、

 鉄鋼物のために悼む なにしろ魚類にはアリバイがない 鮭も鰯も夜には逮捕できない 平松学のエレキベースを聴きながら、車が転落する 黄金のつまった死体が闇ルートで換金された たったいま、たぶんおれのようなものを不滅にさせようとディレクターが企み、そのまちがいを天使が解明する バスキアは死んだ ガリレオは逆らった そしてジェムズ・ブレイクの横顔がクローズアップされ、まことに退屈な流れのなかで、おれはあのひとの詩集を売り払い、その悔やみのなかでいきなり発語する

   *

 わたしは求めない
 あのひとの諒解なんか
 いままで断ち切った枝のように
 ずっとずっとまわりつづける

   *

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