漁り火/
ひだかたけし
海はにびいろ
雨の匂い
忘却された団欒が
遠い漁り火に
燃えている
降り始める雨
降り始める雨
にびいろを打ち
にびいろに渦巻き
(今頃何処かの街角で
産まれ落ちる子の声は
寂しく独り木霊して
母の後ろ背を追いかけて)
海はにびいろ
雨の匂い
忘却された団欒が
遠い漁り火に
燃えている
(一つの場所を得て
一つの場所を失い
そうして時はのっぺりと
行き交う人々を呑み込んで)
海はにびいろ
雨の匂い
忘却された団欒が
遠い漁り火に
燃えている
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