書き換えられ続ける譜面の擦れた紙面が鳴くような音を立てる/ホロウ・シカエルボク
 

それは彼方へ消える幼い日の記憶だろうか、それは燃えながら散りゆくひとつの詩篇だろうか、それは最後の歌をうたう老婆の掠れた声だろうか、長雨の後、窓に残った雨粒が滑り落ちる時のシンクロニシティーは、もしかしたら決して投函されてはならない手紙と同じものかもしれない、記憶はわすれられた、詩篇はただの灰になった、歌声は途切れ、二度と聞こえて来ることはなかった、私たちはそれらが居なくなることで初めて、同じところには留まることはないのだという事実を知る、もちろん、知識としてはもっと早くから知っている、でも、それが本当にどういうものなのかということを早くから知ることは不可能だ、廃小学校の壁を縦横無尽に這い回る
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