ポピュラー・ミュージックは文学たり得るのか?/朧月夜
それを求める者に対して、過去の音楽を再度作り直そうとする彼らの作品は、必然的にアンニュイの調子を帯びてくることになります。しかし、それは実際にはアンニュイですらなく、明るいデカダンスとでも呼べるものであるような気がしています。
ポピュラー・ミュージックの世界には、すでに文学の意匠や技法が流れ込んでいますし、西洋であれば、その皮切りになったのは言うまでもなくボードレールです。しかし、ボードレールが単にデカダンスに溺れていたと考えるならば、それは間違いであると言えます。ボードレール自身は、よくある芸術家と同じように、登場する時期が単に早すぎたのです。彼が表現した退廃や諦観は、世代への諦観であって、
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