精神病院でのある一日/朧月夜
 
 病院のなかでの自分の定位置というものを決めることは難しい。けれども面白い。制約のなかで何かが生まれる。制約がないのであれば、作ればいい。自由がないのであれば、それを作ればいいのと同じように。制約がなく、すべてが自由なのであれば、自分で制約を作り出し、そのなかでの自由を求めればいい。
 病棟外の敷地では、デイケア向けの喫煙コーナーを出て、排水溝にそってまっすぐ歩いていったところにある、植え込みのなかの日陰に自分の居場所を与えている。そこがわたしの定位置。
 傍らには、プラスチック製の配管が流れている。目の前には、ツツジの低木とソテツの樹があって、落葉が何枚か散り敷いている。数日前までは、ツツジ
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