精神病院でのある一日/朧月夜
 
ツジの花が地面にたくさん落ちていたけれど……。今はまばら。
 コンクリート製の段々の上に腰をおろして、漫画を読む。森薫氏の「乙嫁語り」。19世紀の中央アジアが舞台で、時代劇のはずなのに、争うシーンはあまりなく。結婚がテーマという漫画。
 今、子供が嬌声を上げながら通り過ぎていった。丁度下校時間なのだろう。こんな病院に入院しているわたしは、彼らの目からしたら野生動物のようなものなのだろうけれど、どちらが動物らしいだろうか、などと思ったり。病院の駐車場に、バイクがけたたましい排気音を立てて入ってくるのにも驚いたりしている──。
 けれども、爽やかな風が肌を撫でるとなごんだり。今のこの病院では、南
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