棄民のうた/梅昆布茶
いつも通貨は飢民を迂回して流通する
いびつな地球儀の舵をとっているのは誰
鍋の底に経済の残滓がEDMみたいだ
僕は誰。僕のからだのなかには吸い殻と
古い写真と優しかった女しかいないから
ディランのジャケットのカバーみたいに
寒い冬をやり過ごして春と契約するんだ
誰もなにも間違えていないのにね
誰もが恩恵を受けていないような
地の果てに星が堕ちる
夜の隙間に朝がある
人称を無視した古代の合図と目線の
身体言語をつねに身につけて
新小岩駅前の平和通り沿いのタクシーは
人情をわきまえているみたいに粗っぽいが
僕は君と猫と一緒に時代の空をながめている
翻弄されながら生きて唄い続けるのかもしれない
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