癒ゆ/渚鳥
病める鳥は少しの毒を好む、と不意に私の夢が言う。父の姿をしているが、どうも本人ではない、私の父は落ち込んでしまった理由がどうあれ前を向くようにと教え続けたことを覚えている。それにしても毒はよろしくないだろう、と思うけれど。亡くなったのは昨年のこと。悲しい。
空が一段と翳るのを、ただ、受け入れるのだった。苺の群生が目の前に拓けて、赤いと思って食べると苺は酸っぱい。あぁ、なんだそういうことか、だけどもう風任せで、何を誤ったかなんて今さらだろう、ここから出口に向かいたいと思わないのだから、影で編んだ世界の無言を聞き続けている。
疲れ果てたのなら、夢の地を、汚れた目のまま、転げ回って喪った親を探し、追いつきたかった、遠くで弱っちく発光する水色の信号、馬鹿げた願いが赤錆に飲まれて、ぶくりと沈む。
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さら・さら、さら・さ、
目の前、累々とした高い土の斜面から、水が発生し滑り落ちている。薄い虹が水を染めている。餓えも渇きも感じない。もう歩かなくてもいいのだった。
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