時計の螺を巻いて/
静
歩きながら感じた空の匂いが
秋の終わりを白息に伝える
また山の麓に立ち止まって
見上げた景色を瞼に遺す
階段を昇るあの頃に聞いた
唄は今は奏でられないけども
今でも目の端に浮かぶ雫が
心と歴史の質量を示す
階段を降りようとしている今も
世界の底で膝をついた昔も
変わらぬ時を刻むこの腕時計の
螺を巻きながら歳を重ねる
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