記憶の部屋/ふるる
秋の雨が窓を打つ
静かな音の中
君の寝顔を間近で見ていた
冬の厳しさがすぐそこにあり
空気は冷たく
一向に縮まらない距離に悩んでいた
近付けば逃げるのに
留まると残念そうな顔なのは何故
その頃には君の癖は分かっていた
すぐに
人を試す悪い癖
こめかみが痛いと怖い顔もする
しかめつらのまま眠る
ひどく幼く
限りなく優しくなる睫毛
雪のように正しく、やさしくあれと皆が君に言う
(僕だけは言わないように気を付けていた)(君はうつむいてばかりいた)
責任とか義務って何のこと
わたしは何も知らずに産まれたのに
みんなそうだよ
みんなの話なんかしていない
穏やかだ
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