詩の日めくり 二〇一八年六月一日─三十一日/田中宏輔
ュームの地下迷宮』3、中村能三訳)
二〇一八年六月十六日 「明日は、靴を買いに行こう。」
明日は、靴を買いに行こう。
二〇一八年六月十七日 「断章」
「見てごらん」
「なにを?」
「見たらわかるさ!」
あんたは、最初笑っていたが、すぐに消毒剤と小便の、むかっとするような臭いに攻め立てられ、ほんのちょっとだけ穴から覗いて見た。するとそこに歳とった男の手があり、なにやらつぶやいている声が聞こえ、そこから父親の手があんたの腕をつかんでいるのがわかり、もう一度眼を穴に近づけると、ズボンや歳とった男の手を握っている少年の手が、公衆便所の中に見え、あんたは
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