月蝕/soft_machine
もひとり/声もなく
いつまでもさけび/ひと筋のなみだも許されない
子どもらが西にむいて弓をはる
川ぺりには・・・、同じような人たちがやっぱり空をあおいで
あまく熟れた・・・、月を咬むのだ
みんな見えないはだかになってゆく
あぁ、なんてうつくしいのだろう
あぁ、なんて遠いのだろう
カメラを持ってくるべきだった
ニ〇〇ミリでもすこしは近づけただろう
お財布だけは持ってくるべきだった
それで缶ビールを買って
地球の陰が終わった/あらゆる角度で失われてゆく体温/フルニエのバッハが終わった/イヤホンを外すと街の音が意外と大きくてびっくり
ホバークラフトの飛行点検が終わった
フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
真空に触れるおおきな火球
夕映え、最後の一枚が終わった
そうしてわたしは視力をもどしたい/こまかくちぎれた夜をふたたびととのえ
人ごみを離れたきみをメガネ越しに見ると/まるで手塚治虫のマンガみたいだ
だから直接、風を目に受けて
「見てる?」
「見てるわ」
ふたつの月を重ね合わせて
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