風穴の夜/ホロウ・シカエルボク
 
っ張って、引き摺り落して巻き込んじまうとしたもんなんだ、俺は腕を振るって接触を拒む、頼むから一人にしてくれ、そんなところに関わってる時間なんかもうない、思えば小さなころからそんな風に感じていた、俺にはピュアネスがなかった、すべてを鵜呑みにして信じられるようなピュアネスがなかった、現実はいつだって胡散臭かった、おためごかしのように思えた、だからいつだって二の足を踏んでいた、だからいつだって出遅れていたんだ、俺は疑問符にとらわれていた、疑問符に埋もれて死んでしまうような気がしていた、そういえばあの頃にもこんな、火葬場のロビーに居るみたいなな夕暮れがよくあった、きっとそれはその日のどうしようもなさを見送
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