いのちの湿度/ただのみきや
 
       止めどなく

紙の舟 紙の仮面 
まだ目も開かない子猫を
丸めてこさえた心臓で
降り注ぐ悲しみから濾過しても
うまく繋げずこぼしてしまう
机の上の蒼いビーズ
すべてが虚構のような
若き日の涙に
人はふたたび頬を濡らせるか

意味もなく美しい
美しいものは全て

蟻はきょう日差しも背負わず
尽きることのない雨の戯言に
物狂いを演じている

あの文字の結び目を解いた時
あなたはどんな顔をしていたか
その開かれた角度になんの意味も持たない
壊れた置時計だったろうか
鼻腔深く喉の奥まで血の匂いがする

傍に一羽のアオサギが静止した
石を投げ
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