まンりき/ゼッケン
 
自由を取り戻せるはずもない
万力は自由になるための道具ではない、願いだ
おれはハンドルを逆回転させ、潰れたスマホは地面に落ちた
もうそのアスファルトへの落下音は男に刺激を与えない
おれは路上からスマートホンを拾い上げ、男に差し出す
男は首を横に振り、おれは背後のポリバケツに残骸を放り込む
若者はおれの前から去った、振り向きはしなかった
誰もが未来へと向かって進むしかないのだ

世界中で妨害電波装置を積んだ気球が上がっている
すべては海へと流れるばかりだ
雲の上の月の光は冷たすぎて
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