まンりき/ゼッケン
大通公園の花壇に面した歩道の脇にしゃがみこんでいたおれの前に男は
白昼、立ち止まり、コートのポケットからスマートフォンを取り出しておれに
差し出した。おれは手を伸ばして薄いそれを受け取った
傍らの路上に置いた卓上万力のすき間に挟む
するりと抜けて落下しないように片手でつまんだまま、
もう片方の手でハンドルを回す。手ごたえがあって薄い端末は万力に固定された。
もはや落ちることはない
おれはつまんでいた指先をスマホから離し、ハンドルに両手をかける
力を込める前に横に立つ男の顔を見上げる
まだ若い男だった
やるけど? はい、お願いします
おれは抵抗する万力のハンドルに力を込
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