詩の日めくり 二〇一八年三月一日─三十一日/田中宏輔
れたので、幸福の笑顔で眠りにつくことだろうと思う。57歳にしてようやく傑作が書けたのかと思うと、笑みがこぼれる。齢をとることにも意味があるのだ。顔は醜く、身体からは筋肉が落ちようとも、才能だけは涸れることがないことを知れて、ほんとうにうれしい。
おびただしい痛みどめが部屋のなかにある。おびただしい本が部屋のなかにある。おびただしい思い出が部屋のなかにある。ぼくの写真には傷がない。一か月前にはお岩さんのような傷があったのに。ただたんに、うつくしいことがしたかっただけなのだけれど。どんなにうつくしいことだったのだろうか……。
杉中昌樹さんの詩誌でホラティウス特集をなさるらしくて、ホラテ
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