愛の手羽先/平瀬たかのり
 
 ははおやは居酒屋居酒屋(いざかや)をしていた
 食卓にはいつも
 カラリと揚った
 塩こしょうの効いた手羽先だった
 から揚げは食べたことがなかった
 小学生のぼく

 肉を指で割き
 口に入れたら
 ずるり、としゃぶるように
 たっぷり味わってから
 手羽の、その先の先まで
 前歯で噛みちぎって
 小骨の骨ぎしの肉まで

 仕事を終えて風呂あがりの
 トップバリュ〈バーリアル〉は
 どうしたって
 二缶目のプルを開けざるを得なくて

 ははおやが飲みすぎだと諭す
 でもそれは
 あなたの焼いた手羽先が
 小学生のころと変わらず
 カラリと揚がっていて
 塩こしょうが効いて
 旨いからなのですよ

 あの、
 いろいろごめんね

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