炎/葉leaf
 
うたびとの記憶は木の葉のように、それぞれの滑面を散らしながらはすに重なりあってはひめやかに燃えていくのです。残り火は隔たりをときはなって、思い思いの灰を降らせながら真空にうずもれてゆきます。灰は年老いた花のように、朝へと遠ざかる時間の渕へとひとひらの祈りを落とします。そして己の内側に、繊月が草のように結露するのを土とともに待つのです……。結実……。年若い繊月に映し出された黎明の日々を、うたびとは味わいかえし、どもり続ける心のしぐさをひとつの方位へとけずってゆきます。そして彼の瞳にはまぼろしが滴下され、彼の口からは古びた城が立ちのぼってゆくのです……。

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光は錆び付い
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