小さな、闘う人をみて/秋葉竹
 
ぜなにも知らずに
それでもあんなに正しかったのだろう?

一万年まえの人は
文字も知らず
それでもきっと生きるための賢さに満ち満ちていた

それは、嘘なのだろうか?
いまの人がそれでも
世界生成の秘密に近いぶん
過去の人より
ずっと正しいのだろうか?

その
小さな、闘う人をみていると
悲しい風の音が
私にじわじわと滲み込んで来る

悲しい嘘が胸から溢れる

生きているはずなのに勇気も出せず
陳腐な毎日を繰り返し、繰り返し、
だからどんなに小さくても
だから彼女が赤い影のまぼろしでも
その闘う姿は美しく
その姿にみいってしまうのだと思う

この身を
騙し騙し着飾って
毎朝なんとか闘いに出かける私は
清々しい彼女をながめ
ながめることで
ほんのすこしの勇気をわけてもらい
私は私の戦場に
振り絞った勇気をたいせつに包み込み
向かっていくだけだ
たとえ彼女のように
世界に刃向かえなくても








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