年越し夜勤の思い出/板谷みきょう
うし
ままよとばかりに
内窓を開けても
外は真っ暗で何も見えない
仕方なく内鍵を外し
窓を開いて吃驚した
十数人の人影が見え
直ぐに
退院した元患者だと気付き
咄嗟に
入院中の不満を理由に
お礼参りの仕返しだと思った
「誰だ!
こんな夜中に!
何の用だっ!」と叫ぶと
雪をこいで窓辺に近付き
室内の蛍光灯の明かりに
照らされ
顔がはっきりと解った
一昨年、退院していった
トラック野郎の穐山さんだ
彼の入院中に
不快な思いをさせた記憶は無い
…というか
ボクには、どの患者に対しても
恨まれるような扱いを
した覚えが無いのだ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)