第十巻七十二番/板谷みきょう
 
一九九九年、七の月 
空から恐怖の大王が降ってくる

精神病院は
過熱し続ける人類滅亡報道に耐えきれず
心を壊し精神を病む人が増えていた

七月二十七日は
閉鎖病棟の夜勤だった

詰所を挟んで
男子病棟と女子病棟が別れており
0時のオムツ交換を終えて
女子病棟から詰所に
介護士が戻って来る後ろを
三十路前の女子患者が血相を変えて
追い駆けてきた

顔色は青褪め
何故か汗だくで
口角には泡を蓄えていた

「板谷さん!今夜です!
地球が滅びます!
お告げがありました。
早く、みんなを起こして
安全な場所に避難しないと…」

そう言うが早いか

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