ビール!/平瀬たかのり
 
 ぼくは詩に戻ってきた
 シナリオへの旅の途中で

 詩集を出したいとか
 詩人として名を成したいとか
 そんな気持ちは
 もはやない

 ただ
 夏の盛り
 汗みどろになって働いた日の夜の
 ビール
 夕べのうちから冷やしてきた
 ビール
 いつもは発泡酒、でも今日だけはの
 ビール
 そんな詩を書きたい

 一口目、あーっ!
 二口目、……これだよな
 三口目、旨いなあ
 飲むほどに全身の細胞が
 ぷつぷつ泡立つような
 ビール
 そんな詩を書きたい

 コキンコキンにヒヤいビール!
 ただただ
 そんな詩を書きたい

 シナリオへの旅の途中
 ぼくは詩に戻ってきた 

戻る   Point(0)