詩の日めくり 二〇一七年十三月一日─三十一日/田中宏輔
 
とがある。ときには、その映画や本にこころから共感して、自分の生の実感をより強く感じたりすることがある。自分のじっさいの体験ではないのに、である。これは事実に反している。矛盾している。しかし、この矛盾こそが、意識領域のみならず無意識領域をも含めて、わたしたちの内部にあるさまざまな記憶を刺激し、その感覚や思考を促し、まるで自分がほんとうに体験しているかのように感じさせるほどに想像力を沸き立たせたり、生の実感をより強く感じさせるほどに強烈な感動を与えるものとなっているのであろう。イエス・キリストの言葉が、わたしたちにすさまじい影響力を持っているというのも、イエス・キリストによる復活やいくつもの奇跡が信じ
[次のページ]
戻る   Point(14)