詩の日めくり 二〇一七年十二月一日─三十一日/田中宏輔
んから詩集『倭人伝断片』を送っていただいた。
冒頭収載のタイトル作から引用しよう。奇才だと思う。
前を歩く者の見えないくらい丈高い草の生えた道とも言えぬ道を歩くうちにわたしのちぐはぐな身体は四方八方に伸び広がり丹色の土の広場に出るまでもなくそこに刻まれたいくつかの文身の文様を頼りに、しきりに自分の身体に刻まれた傷、あの出来事の痕跡とも言えぬ痕跡、あるいは四通八通する道のりを想うばかり、編んだ草や茎の間から吹き込む風にわたしの睫毛は微かに揺れ、もう思い出すこともできないあの水面の震え、光と影が草の壁に反射して絶えず揺れ動き、やがてかがよい現われて来るものがある、
(詩篇・冒頭・第
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