長かった街で/番田 
 
は、寄っていくべき店として残っていて欲しい。そんなことを考えながら、ふわふわとした味のケーキを僕は食べていた。


五反田の地面師詐欺のあった、あの建物は取り壊されてしまい、入り口や古びた柵の面影も今はなくなってしまっていた。ああいった古びた建物が壊されることなく残っていたこと自体が、ことの発端だったようにも思われる、さっぱりした風景。仕掛け人の一人であったカミンスカス容疑者はフィリピンで身柄を拘束されたのだという。しかしそこで捕まえられる間に、どこで何を思い、どのような行動をとっていたのかは、何も、僕は想像することはできない。僕はこのあたりにあった会社を退職した後、埼玉で次の仕事についたものだった。埼京線で電車を乗り継いだ先にある、物寂しいというよりも、むしろ、なんとなく殺風景な風景の中を歩いていた…。生きていくということ自体に、やがて、怯えや不安を感じはじめたのも、当時の頃だったことをよく覚えている。
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