雲海/山人
九月十九日、登山道除草九日目。先月中旬から土日を狙い、作業は遅々ではあるが進んでいた。
未だ暗い早朝、ヘッドランプを点けて準備をする。ときおり、行楽に向かうのか県境トンネルの中を疾走する車たちをうらやむ私がいる。いつものことながら、こんなことをしなければならない境遇を呪う。
県境尾根から刈り払い機を担ぎ、歩き出す。暗い山道をヘッドランプで照らせば、朝露がふるふると跳ねるようにひかり、ヤマアカガエルの幼生がびっくりして跳ねていく。ときおり、光を求めて小さい蛾が寄ってくるが、さほど多くはない。闇は次第に薄れ、灯りがなくても歩けるようになる。
県境尾根登山道は、途中まで送電線の巡視路となっ
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