だいぶダイブ / ある女の子篇/末下りょう
ライブの ダイブって だいぶ スロウ って 思った
想像よりふんわりした、柔らかい感触のいくつもの手のひらに背中を受け止められた。
フロアのみんなを信じてた。理由もなく信頼してた。
わたしはなにかの生け贄みたいな体勢のまま、中空で音楽とファックした
それから最後の曲が終わるまで、ずっとふわふわした感じで音のなかに漂ってた。
よれよれに伸びて破れたTシャツのままわたしは真冬のライブハウスを後にして、何事もなかったような顔で家に帰った。家族の呆れ顔を無視して部屋に入り、狭くてぎしぎしうるさいベッドに倒れ込み、壁に貼ってある、ついさっき一緒にステージで笑い合ったバンドのポスターを眺めて、この夜は一生忘れないだろうなと、そう思って服のまま眠りに落ちた。
戻る 編 削 Point(4)