最初から灰だった書物へのオマージュ/ただのみきや
した残り香
ああ愛はフナムシ愛はゴキブリ
青すぎる血の匂いは遠く星々をも掻き乱す
ナイ宇宙 音楽的死ヨ
とある輪廻の爛れた性器へ感嘆符も疑問符も与えるな
秋桜ゆれる四辻に
わたしの頭を小脇に抱えて立つ
掻っ切るような笛の音よ
嘴も蹄もない愉悦の遁走者よ
生えたばかりの翼の芽は
見知らぬ大勢に愛撫され
ほころぶことのないしこりとなった
季節への耽溺は
笑いながら腐れながら
遥かな空をゆくメダカの群れの乱反射
決して逃れられない掃討戦
静まった渦中で
バラの発狂を値踏みするな
恋人は片言で喰え
蝸牛のようにわたしは瞑り剃刀の上で歌うだろう
ヒマラヤの欠落から降り注ぐ
苦い天使の遺灰
破壊と創造の模倣者として
ほどいては編み直す
青白い記号のもつれから
ねめつけろ 処女の如く
通り魔の澄んだ得物となって
《2021年9月19日》
戻る 編 削 Point(3)