最初から灰だった書物へのオマージュ/ただのみきや
 
巨人の頭蓋の内側で
天井画を描き続けている
孤独なロウソクのゆらめき
舌の閃き いのちの虚飾

わたしたちは互いの羞恥をめくり合った
どの顔も黒焦げのまま燃え残りくすぶり続け
追慕は灰の蝶
不文のまま堕胎した祈りの実存への擬態
――あなたの オマエの 君の 
泡立つ声 白濁した三角州へ
少女の髪より細く注がれたインクの縮れ
と その青い凍結

ふわりとした鴉の事象ではなく時感覚
寸法も重さもない一抹の腐敗へ
捻じれ落ちる眼差し
白い封書 「不在在中」
毬(いが)の中で身をよじり
鈴虫の脚をもいで釣り糸を垂らす
裂果を濯ぐきよらかな睦言の
カサコソした
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